袋小路に花は咲く

読書や映画の感想

神様の思し召し(2015 イタリア)

医者と神父、一見相容れない2人が、主人公の息子が神父になると言い出したが為に、神父が息子を洗脳したのでは?と疑い、素性を偽って行動を共にすることになる。笑いを多くちりばめておきながら、家族や信仰、人生において何が大切かを考えさせられる。正反対の二人が微笑ましい。ラストが秀逸。

 

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今日も完璧なオペで、患者の命を救った心臓外科医のトンマーゾ。医師としては天才だが、傲慢で毒舌で周りからはケムたがられていた。ボランティアが趣味の妻との仲は倦怠気味で、お気楽な長女はサエない男と結婚。でも、頭脳明晰な長男が医学の道を継いでくれれば満足だ。
ところが、あろうことか医大生の息子が「神父になりたい」と宣言! 表向きはモノわかりのいいフリをして教会に潜入したトンマーゾは、息子がハデなパフォーマンスで人気のピエトロ神父に“洗脳”されているとニラむ。さらに、神父が実は“前科者”であることが判明。トンマーゾは、失業して無一文で妻からはDVを受け、もうどん底だと悩む信者を演じて神父に近づく。すると、親身になった神父に家族に会いに行くと言われてしまい、追い詰めるはずが追い詰められるトンマーゾ。果たして、神父の正体は? 崩壊寸前の家族の行方は?

 

正反対の凸凹コンビというのは物凄く映える。イタリアの映画では「最強のふたり」の記録的大ヒットが記憶に新しい。

主人公の嫌味な性格が終盤に行くにつれて気にならなくなる。こうなってしまうと、自分がこの主人公を好きになってしまっていることに気付かされる。

家族内での問題や信仰について、笑いを混ぜつつ真摯に向き合ってるのはすごく良い。観ていて面白いだけではなく、考えさせられる。

自分の息子が夢を抱いて、それに向かって一歩ずつ進んでいく。それを見て自分の人生とは何かを再考する母親。ぼくらがこの母親になり替わる瞬間がいつ訪れるかわからない。

 

息子のアンドレアが隠遁で2週間孤独を感じたとき、聖職が向いていないかもしれないと主人公・トンマーゾに告白するシーンで、物語の変化が見える。

元来のトンマーゾならばきっと喜んでいたはず。だけど、そうじゃなかった。彼もまたピエトロ神父と関わるうちに少しずつ変わっていた。

医者として命を救い続けてきたトンマーゾが、重症のピエトロ神父を救えないと悟った時、医者の無力さを知る。人は全知全能の神にはなり替わることはできない。だから人は祈る。エンディングの後、奇跡は起きたのか。ぼくは禁断の果実(梨)が二度落ちたのだから、きっと奇跡は起こったのだと思う。

「PK」とは違った切り口で宗教を扱っていて、これはこれでアリだったかな。

 

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3.2/5.0満点中